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残暑の厳しい8月、愛知県でペンギンが脱走して行方不明になる、という事件が発生しました。
台風の接近もあり、迷子のペンギンはどうなってしまうのか非常に心配しましたが、その後元気に発見されたというニュースを見てホッとしたところであります。
今回は日本国内でのペンギン脱走事件についてまとめてみました。
南知多でのペンギン脱走事件
事件の経緯
2024年夏、愛知県南知多町の日間賀島の海水浴場で、ペンギンとのふれあいを謳った出張動物園が行われていました。
イベントの最終日となった8月25日。この日は台風が近づいていて、風も強くなっており、早めに会場の撤去作業を行うことになりました。
撤去作業の最中、メスのケープペンギン「ペン」が逃走。
海水浴場のネットも潜り抜けて、泳いで行ってしまいました。
スタッフの方は島民の方々とも協力して、必死に捜索されたのですが、ペンギンは体長50cmほどと小さいうえに遊泳能力も高く、捜索は困難を極めました。
このイベントはケープペンギンと泳いだり、ビーチで手をつないで写真撮影ができるというもので、大盛況だったそうです。
発見されたペンギン
数日経っても有力な情報が見つからず、もうダメかと思われた迷子のペンギンでしたが、なんと2週間後の9月8日に発見されました!
ペンギンが発見されたのは45㎞も先の新舞子。
知多半島の端から中部国際空港を超えて、相当な距離を泳いでいたのです。
ペンギンには目立った外傷もなく、元気な様子だったということです。
葛西臨海水族園ペンギン脱走事件
東京湾を3か月生存したペンギン
ペンギンの脱走で最も有名な事件と言えば、葛西臨海水族園のフンボルトペンギン脱走事件ではないでしょうか。
2012年3月4日、葛西臨海水族館から1羽のフンボルトペンギンが脱走しました。
このペンギン、脱走経路はよくわかっていません。
高さ約4mある壁を乗り越えたとも考えられず、どこか隙間から脱走したのではないかと思われます。
その後東京湾のあちこちで漂っているのが目撃され、荒川や江戸川を上っていたことも確認されています。
ペンギンは脱走から3か月近くたった5月24日、江戸川の河川敷で保護されました。
脱走ペンギンムキムキ化
保護されたペンギンは、健康状態に問題もなく、時期に群れにもなじみ、脱走前と変わらぬ様子となりました。
ただひとつ、かなりがっしりした体型に変わっていたそうです。
水族館では何もしなくとも十分なエサが与えられますが、東京湾では自らエサを調達しなければなりません。
魚を捕るために動き回った結果、胸筋が発達し、他のペンギンと比べてもわかるぐらいムキムキになっていたそうです。
脱走時の年齢が1歳、まだ亜成鳥だったというのも驚きです。
なんともワイルドなペンギンですね。
このペンギン、脱走時には名前もなかったのですが、脱走で一躍有名となり、公募の結果「さざなみ」と名付けられました。
個体識別番号が337号だったことから語呂合わせで考えられたそうです。
迷子のペンギンは生存できるか?
迷子のペンギンが生存できる理由
これまでの2例を見てもわかる通り、ペンギンが迷子になったら即死ぬ、ということはありません。
迷子になったペンギンはケープペンギンとフンボルトペンギンです。
これらのペンギンは、南極に棲むアデリーペンギンやコウテイペンギンとは違い、暖かい地域に生息しています。
ケープペンギンの棲む南アフリカのケープ地方もフンボルトペンギンの棲む南米チリからペルーにかけての海岸地帯もどちらも穏やかな温帯気候の地です。
温帯に棲むケープ、フンボルト、マゼランペンギンの飼育最適温度は4.5℃~26.5℃とされていて、日本の気候に近いことがわかります。
迷子のペンギンがクリアすべき課題
まずは生きた魚を捕ることができるか、これに尽きると思います。
水族館では寄生虫対策として、一度凍らせた魚をエサとして与えています。
つまり、死んだ魚しか食べたことがないわけです。
葛西臨海水族園のさざなみのように順応性の高いペンギンなら良いですが、エサが捕れずに亡くなるペンギンもいるでしょう。
南知多のペンは、魚が捕れていたかわかりませんが、換羽期に備えて栄養を蓄えた状態だったので、少しの期間なら耐えられたようです。
実際、ペンギンは換羽期には絶食します。
外敵から逃げることができるか、という課題もあります。
本場ペルーでは野生のキツネやノラ猫が天敵だそうです。
また、漁師さんの網に引っ掛かってしまったり、行き交う船にぶつかってしまうことも考えられます。
当然、水族館にはそのような脅威はありませんので、初めて見るそれらから上手く逃げられるかわかりません。
いくら気候が似ているとは言っても、昨今の日本の猛暑を乗り越えることができるかも課題です。
水族館では「温帯に棲むペンギンを屋外で飼育する際は26.5℃を超えると暑さを和らげる手段を取るべき」とされていて、スプリンクラーや日陰が設置されたりしています。
40℃近くになる猛暑で自分で涼をとるとなると厳しいかもしれませんね。
日本はペンギンの楽園?
以前このブログでも紹介しましたが、日本の動物園・水族館ではフンボルトペンギンが増えに増えてあらゆる園・館で大量に見られるようになっています。
フンボルトペンギンは絶滅危惧種なのに日本にめちゃくちゃいるのはなぜ?もちろん日本の園・館の素晴らしい飼育繁殖技術ということもありますが、日本の気候が彼らにジャストフィットしたのでしょう。
とは言え、水族館育ちのペンギンにとって、外界は大変に過酷なものです。
今後迷子のペンギンが現れないことを願います。