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えさ代のかかる動物と言えば、何だと思いますか?
身体の大きな象や、VIP待遇を誇るパンダでもなく、コアラなんです。
あの小さいコアラが、一体どうして?
しかも、コアラはえさ代のせいでリストラ危機とも言うではありませんか。
コアラのえさ事情と、日本国内におけるコアラ飼育の歴史と現状をご紹介します!
おもな動物の年間えさ代(1頭あたり)
- アジアゾウ・・・・・・約300万円
- ジャイアントパンダ・・約360万円
- コアラ・・・・・・・約2000万円
コアラが日本にやってきた
コアラが日本に初めてやってきたのはいつ?
コアラが日本に初めてやってきたのは1984年のことです。
東京都とオーストラリアのニューサウスウェールズ州が友好都市提携をしたことを記念して、6頭のコアラが贈られました。
当時、コアラを見ることができるのはオーストラリア以外ではアメリカのみであり、コアラの来日は盛大に歓迎を受けることとなります。
成田空港から来日したコアラたちは、警察の先導のもと、獣医師が付き添い、飼育される各園へと移送されました。
破格の待遇で迎えられたコアラたちは、多摩動物公園(東京都)、東山動植物園(愛知県)、平川動物公園(鹿児島県)の3つの園で2頭ずつ飼育されることとなったのです。
最盛期のコアラ
日本に初めてコアラがやってきた1984年、コアラたちが飼育された園には多くの人たちが駆け付け、コアラブームが巻き起こりました。
その後、平川動物公園で初の繁殖に成功し、埼玉県こども自然動物公園などコアラを導入する園も増え、最盛期には9園で96頭が飼育されていました。
コアラのえさ代問題
コアラはなぜユーカリを食べるのか
コアラがユーカリを食べることは有名ですが、ユーカリを食べる動物はコアラ以外にいません。
と言うのも、ユーカリは栄養素も少ないうえに、なんと毒があるんです。
しかし、コアラの肝臓には解毒作用を持つ酵素があり、腸には解毒や消化を助ける腸内細菌が棲んでいます。
コアラの消化器官はユーカリを食べるために特化しているのです。
そんなコアラであっても、ユーカリの解毒には多くのエネルギーを必要とします。
そのため、コアラは一日のうち20時間近くも寝て過ごす必要があるのです。
コアラは誰も食べないユーカリを消化できる身体に進化することで、生存競争を生き抜いてきたのです。
コアラのえさ代はなぜ高い
コアラの身体はユーカリを食べるようにできているので、他のえさはまったく食べません。
ユーカリならなんでもいいかと言うとそうではなく、600種類あるユーカリのうち、コアラが食べるのは30種類だけです。
しかも、日によって食べるユーカリが違うというこだわりぶりです。
そのため、飼育する動物園では毎日数種類のユーカリを用意して与えます。
コアラは気に入ったユーカリの葉の部分のみを食べます。
コアラが一日に食べるユーカリの量は200g程度ですが、実際は20倍以上ものユーカリを与えなければいけないのです。
ユーカリは日本国内に自生している植物ではありませんが、国内の契約農家で栽培されています。
コアラは若い葉っぱしか食べないので、複数の農家と契約する必要があります。
冬場は鹿児島や沖縄などの暖かい地域で作られたユーカリを空輸するため、輸送費もかかります。
よって、コアラのえさ代は園にもよりますが、1頭当たり2000万程度かかっているのです。
日本のコアラが減っている
コアラ展示の減少
現在、日本国内のコアラの数はピーク期から半減し、飼育園も7園となっています。
その背景には、飼育とえさであるユーカリ確保の難しさがあります。
デリケートなコアラ
コアラは一度病気になってしまうと、治療が困難だと言います。
コアラは本来毒素の多いユーカリを腸内で分解しています。
それを可能にしているのが、コアラの腸内に棲む細菌です。
コアラがかかりやすいクラジミアの治療でも抗生物質が使われますが、抗生物質はこの腸内細菌をも殺してしまうことがあります。
腸内細菌が死滅してしまうと、コアラはえさを食べることができません。
そのため、限られた抗生物質しか使えず、そもそも体調を崩さないようにすることが重要となってくるのです。
飼育下のコアラの繁殖能力は衰えています。
原因はわかりませんが、年々いわゆる「草食」のオスが増えていて、交尾をしなくなっているのです。
加えて、近親交配などから赤ちゃんコアラが産まれてもすぐに死んでしまう事例も多くなってきました。
そこで、コアラを飼育している動物園が協力して、コアラをトレードして繁殖させる試みが行われています。
えさ代が高額過ぎてもう飼えない
2019年、天王寺動物園(大阪府)ではイギリスの動物園に飼育していた1頭のコアラを貸し出すこととなりました。
これによって、1989年より続いてきたコアラの展示が終了しました。
長年コアラを飼育してきた天王寺動物園では、コアラ展示終了を惜しむ声も多いですが、それ以上にコアラはえさ代(税金)のかかる困った存在でもありました。
天王寺動物園では、1頭しかいないコアラのえさ代に3200万円かかっていたのです。
コアラにはブーム期のような集客力もなく、採算のとれない動物となってしまっています。
「貸し出す」ことにはなっていますが、事実上の譲渡であり、コアラが天王寺動物園に帰ってくることはまずないでしょう。
コアラのえさを確保する取り組み
平川動物公園の自家栽培
平川動物公園(鹿児島県)では、国内で最も多い16頭のコアラを飼育しています。(※2022年12月現在)
えさ代も相当・・・と思いきや、平川動物公園では、全頭あわせて5000万円。
このようにえさ代を抑えることができているのは、園で独自にユーカリを栽培しているからにほかなりません。
平川動物公園では、鹿児島市内を中心に県内26か所に土地を借りて、ユーカリを育てています。
なんとコアラが来園する1984年より6年も前からユーカリの栽培にとりかかり、コアラの食べるユーカリを育て続けてきたのです。
平川動物公園では、コアラがまだまだ増えることも念頭に置いてユーカリの苗を植えています。
東山動植物園のクラウドファンディング
2013年に東山動植物園(愛知県)がクラウドファンディングでユーカリの栽培費用を求めた結果、目標額の100万円に対し、5倍近い475万円の寄付が集まりました。
東山動植物園はコアラが初来日して以来飼育を続けてきた園のひとつで、以来コアラは高い人気を誇っています。
現在も東山動植物園のコアラのえさの一部は、名古屋市内の平和公園にある栽培温室で育てられています。
このように、コアラの飼育展示を守るために各園で自家栽培などの努力が続けられているのです。
コアラの展示がこれからも続いてほしいですね。
コアラのいる動物園
南方系コアラのいる動物園
コアラには2系統あり、南方系と北方系にわかれます。
南方系コアラの飼育展示をしているのは、現在日本で淡路ファームパークイングランドの丘一か所のみです。
- 淡路ファームパークイングランドの丘(兵庫県)
北方系コアラのいる動物園
現在日本の動物園で飼育されているコアラの多くが北方系コアラとなります。
淡路ファームパークイングランドの丘では、2021年に繁殖を目的として、神戸市の王子動物園から2頭の北方系コアラがやってきました。
これによって、淡路ファームパークイングランドの丘では南方系、北方系両方のコアラを見ることができるようになったのです。
- 多摩動物公園(東京都)
- 埼玉県こども自然動物公園(埼玉県)
- 金沢動物園(神奈川県)
- 東山動植物園(愛知県)
- 神戸市立王子動物園(兵庫県)
- 淡路ファームパークイングランドの丘(兵庫県)
- 平川動物公園(鹿児島県)
えさ代がかかると言ってもやっぱりコアラは可愛いですよね!
コアラを見ることができる動物園は少なくなっています。
ぜひコアラを見学にお出かけしてみてください。
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