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日本で人気の鳥、ペンギンは津々浦々の水族館や動物園で見ることができます。
世界に棲むペンギン18種のうち、なんと日本では11種類が飼育されているんです。
とは言え、ペンギンはもともとは日本には生息していない鳥です。
日本人は一体いつからペンギンのことを知っていたのでしょうか。
また、日本でペンギンの飼育が始まったのはいつからでしょう。
日本人に愛される鳥、ペンギンの歴史を追いました。
新井白石ペンギンを紹介する
新井白石って誰?
新井白石は江戸時代中期の政治家で、朱子学者でもありました。
あらゆる学問に長けていたといいます。
6代将軍徳川家宣・7代将軍家継に仕えて実権を握り、白石の行った政治は「正徳の治」と呼ばれています。
「ペフイエウン」ってなんだ?
1708年、イタリア人宣教師のシドッチがキリスト教布教活動を目的として日本に密航し、捕えられるという事件が起きました。
捕えられたシドッチは、時の権力者であった新井白石による尋問を受けることとなります。
白石はシドッチの世界に対する深い知識に感銘し、聞いたことを「西洋紀聞」と「采覧異言」という本にまとめました。
この「采覧異言」の中に「ペフイエウン」という生物が登場します。
「ペフイエウン」こそがペンギンのことで、この時日本で初めてペンギンという生物が紹介されたのでした。
江戸時代の鳥図鑑に載ったペンギン
イラスト付きで紹介されたペンギン
江戸時代後期に編纂された鳥類分類図鑑「禽譜(堀田禽譜)」にはイラスト付きでペンギンが紹介されました。
「禽譜」は徳川幕府の若年寄であった堀田正敦が鳥を生息地ごとに分類してまとめた図録で、ペンギンは「水禽(水鳥)」の部に紹介されています。
シーボルトの教えた「ピングイン」
ペンギンが「禽譜」に掲載されたいきさつは次のようなものでした。
本草学者・栗本瑞見が謎の鳥の剥製を持っているので、江戸に来ていたドイツ人シーボルト(オランダ人として出島に滞日していた)に見せて確認しようということになりました。
これは瑞見の父である田村藍水が享保年間にオランダ船から手に入れて家宝にしていたものでした。
シーボルトによると「ピングイン(ペンギン)」のものであろう、とのことでした。
その後、シーボルトの持っていた本にあるペンギンの絵を描き写したものが「禽譜」の「ピングイン」図です。
『この鳥オランダ語で「ピングイン」ラテン語で「アプテノデイテス」と称す』と書かれており、オウサマペンギンのことを指していると考えられます。
「アプテノデイテス」は「Aptenodytes(アプテノディテス属)」のことでしょう。
アプテノディテス属にはオウサマペンギンとコウテイペンギンが含まれますが、「ピングイン」図が描かれた当時にはコウテイペンギンは発見されていなかったため、描かれているのはオウサマペンギンということになります。
「ピングイン」図が見てみたい方はこちら→「禽譜」東京国立博物館画像検索へ
ペンギンの展示へ
日本初展示はフンボルトペンギン
ペンギンは日本に生息していない鳥ではあるものの、その存在は江戸時代から知られていたわけです。
オランダ船を通して剥製も持ち込まれていました。
しかし、日本人が遠い異国の地に棲むペンギンに実際に会うことができたのは、明治時代も終わりに差し掛かってからのことです。
初めて生きたペンギンに遭遇したのは南極探検隊の隊員たちで、南極大陸へと向かう途中の1911年のことでした。
ペンギンは美味しくない?日本初の南極探検隊は味噌煮で食べていた続いて、生きたペンギンが日本に初めて持ち込まれたのは1915年のことです。
やってきたのは南米産のフンボルトペンギン2羽でした。
南米航路客船の機関長がチリから持ち帰ったフンボルトペンギンのうち1羽を上野動物園に寄贈し、1羽を浅草花やしきに売ったということです。
残念ながら上野動物園のペンギンは寄贈から9日後に死亡し、花やしきの方もどうなったかは不明です。
しかし、その後も次々とペンギンは日本にやってきて、なかでも兵庫県西宮市にあった阪神パークには「ペンギンの海」というペンギン専用の展示場が作られ、ケープペンギン100羽あまりが飼育されていました。
ペンギンの飼育展示は大変人気を博しましたが、第二次世界大戦によって一時衰退しました。
捕鯨船とペンギン
第二次世界大戦後、戦後の食糧不足を補うため、南氷洋での捕鯨が盛んになりました。
当時捕鯨船は、現地で捕まえたペンギンを船に乗せて持ち帰り、捕鯨基地のある街に寄贈していました。
今ではペンギンを連れ帰ることはできませんが、こうした縁から下関や長崎の水族館では現在もたくさんのペンギンが飼育されています。
長崎にはペンギンを専門に展示する長崎ペンギン水族館があり、下関ではペンギンを「市の鳥」に制定して親しんでいます。
まだ姿を見たことのない時代から日本人に親しまれてきたペンギンの歴史を紹介しました。
ペンギンの歴史や生態についてもっと知りたい方はこちらの書籍がおすすめです。
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