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2023年1月、大阪市の淀川河口付近に巨大なクジラが姿をあらわし、マスコミが駆け付ける騒ぎとなりました。
このクジラ、体長は15mほどのマッコウクジラで「淀ちゃん」と名づけられて親しまれましたが、発見から5日目(1月13日)に死亡しているのが確認されました。
広い海にいるはずのクジラがどうして大都会の淀川にやってきたのでしょうか。
また、2月には宮城県石巻市の河口付近にマッコウクジラの死体が流れ着き、油が流れ出すなどこちらも注目を集めています。
マッコウクジラの油って一体何なのでしょう。
マッコウクジラがどんなクジラなのか、あわせてみていきたいと思います。
淀川に現れたマッコウクジラ
マッコウクジラが発見された場所
1月9日、大阪市の中島パーキングエリアを利用した方からの通報で、クジラが確認されました。
クジラは中島パーキングエリアから南方の淀川河口付近にいたということです。
のちに、このクジラは体長15m超、体重38tでオスのマッコウクジラ(成体)であることが確認されました。
この場所は、ユニバーサルスタジオジャパンにほど近く、川岸には工場なども多い所です。
河口付近であることから、海水とは塩分濃度の異なる汽水域となります。
水深も2m程度と浅くなっています。
船舶の行き来も多く、クジラにとって良い環境とは言えないようです。
なぜマッコウクジラが淀川にいるのか
マッコウクジラは本来群れで生活しています。
今回の個体は衰弱して、群れからはぐれて迷い込んでしまったのではないかと考えられています。
詳しくは今後の調査を待ちたいところです。
迷子のマッコウクジラはどうなった?
水深の浅い河口付近ではエサも獲れなかったようで、発見3日目からは徐々にクジラの動きが弱まり、潮を吹くようすも見られなくなっていました。
結局、5日目の1月13日に、大阪市や海遊館の職員によって死亡が確認されました。
何とか外洋に帰って欲しいところでしたが、残念な結果となってしまいました。
大阪湾にやってくるイルカ・クジラ類
大阪湾にクジラが姿を現すことはほとんど例のないことです。
イルカであれば、年に何回か群れで入り込んでくることもあると言います。
また、大阪湾には小型のイルカであるスナメリも生息しています。
1966年に行われた大阪万博のための地下鉄工事で、縄文時代のカツオクジラの化石が見つかっています。
かつて大阪湾は現在よりも海が広く、クジラが回遊してきていたと考えられています。
宮城県に流れ着いたマッコウクジラ
マッコウクジラから油が流出
2月4日、宮城県石巻市の北上川河口に体長12m、オスのマッコウクジラの死骸が漂着しました。
大阪のケースとは異なり、太平洋に面した宮城県でクジラの死骸が漂着することは特別珍しいことではありません。
問題となったのは、このクジラから油が流出していたことです。
周辺はワカメの養殖などの漁業が盛んな海域です。
砂浜に油の塊もあわせて流れ着いており、漁業への被害が心配されました。
マッコウクジラから流れ出ていたのは、脳油と言われる頭にある油です。
総量は2t以上あると考えられ、船体や漁業道具への付着も考えられると言います。
石巻市の対応
発見から2日後の6日から7日にかけて、近くの砂浜に埋却する作業が進められました。
クジラの周りに80mのオイルフェンスを設置して、これ以上油が海に流出しないような対策も取られています。
クジラの死骸には、爆発の危険性もあるため、早急な対応がとられました。
マッコウクジラってどんな生き物?
マッコウクジラの大きさ
マッコウクジラはハクジラの中で最大で、クジラ全体でも4番目に大きい生物です。
オスで体長15~20m・体重50t、メスで体長12~14m・体重25tほどになります。
マッコウクジラの形態
マッコウクジラは大変頭が大きく、四角い箱のような形をしています。
頭の大きさはオスで身体の3分の1にもなります。
色は黒色から暗い灰色で、身体の表面はシワで波打っています。
背中にはこぶ状の背びれと小さなこぶがいくつかあります。
また、マッコウクジラは尾びれの形が個体によって異なるため、尾びれによって個体識別することができます。
マッコウクジラの生息地
マッコウクジラは北極圏や南極海を含む、世界中の海に生息しています。
通常は岸から離れた深海沖に暮らします。
冷たい海に回遊しているのはオスのみで、メスは暖かい地域でしか見られません。
これは、メスはオスに比べて脂肪が少ないためです。
マッコウクジラの食べるもの
マッコウクジラの食べるものはマグロなどの大型魚類やさまざまなイカ類です。
マッコウクジラは潜水が得意で、深海に棲むイカを主に捕食しています。
その中にはダイオウイカ(最大で18m)も含まれています。
マッコウクジラの潜水距離は2000m以上、時間にして2時間ほど潜り続けることが可能です。
マッコウクジラの寿命
マッコウクジラの寿命は70年程度と考えられています。
マッコウクジラの油って何?
マッコウクジラの頭には油がある
マッコウクジラの大きな頭部には、鯨蝋と呼ばれる白濁色の脳油があります。
その量は一頭あたり2.5tにも及びます。
かつて鯨蝋は「クジラ蝋燭」という高級蝋燭、灯油や機械の潤滑油などに使われ、大変重宝されました。
マッコウクジラの油は何のため?
イルカなどのハクジラ類はエコロケーションといって、自身が発した音波の反射を受信して、物の距離や大きさ、方向をはかることができます。
イルカなどはメロンという脂肪組織から成る器官によって音波を受信していますが、マッコウクジラはメロンの代わりに脳油を利用していると考えられています。
マッコウクジラが脳油を潜水に利用しているという説があります。
脳油は通常は液状ですが、約25度で固まる性質を持っています。
マッコウクジラは潜水する際、海水を吸い込んで気道に冷たい海水を送ります。
マッコウクジラの気道は脳油をぐるっと回っているので、脳油が冷やされて凝固します。
凝固したことで比重が増え、重りとして潜水に利用することができるのです。
浮上する時は、逆に肺の中にあるあたたかい空気を気道に満たします。
脳油があたたまり、液体に変わることで比重を減らして楽に浮上することができるのです。
なお、この説が正しいのかはいまだわかっていません。
ペリーはマッコウクジラの油を求めてやってきた
18世紀から19世紀にかけて、アメリカでは鯨蝋を目的にマッコウクジラが大量に捕獲されました。
あまりにも獲りすぎたため、アメリカ周辺のマッコウクジラがいなくなってしまい、西太平洋での捕獲を進めることにしました。
そこで、捕鯨の基地候補として目を付けられたのが当時鎖国をしていた日本だったのです。
かくしてペリーは江戸幕府に開国を迫ることとなります。
日本が開国する少し前からアメリカの捕鯨船は日本近海に多数現れていました。
土佐(高知県)の漁師ジョン万次郎は漁に出ていた際、強風に合い遭難してしまいます。
運よく沖合の黒船に助けられたジョン万次郎。
ジョン万次郎を助けたのもアメリカの捕鯨船でした。
マッコウクジラの名前の由来は?
和名「マッコウクジラ」の由来
マッコウクジラは漢字で書くと「抹香鯨」です。
抹香というのは、粉末状のお香のことです。
現在ではシキミを原料に、焼香用に利用されることが多いですが、古くはビャクダンが使われていました。
そんな抹香のような香りがするクジラ、ということで抹香鯨と名づけられています。
とは言っても、マッコウクジラの身体をにおったとしてそのような香りはしません。
マッコウクジラの腸内で作られた結石を龍涎香(りゅうぜんこう)と言うのですが、その龍涎香が抹香の香りに似ている、と言うことです。
龍涎香はマッコウクジラの解体時に取り出すほか、自然に体外に排出されることもあります。
マッコウクジラの身体から排出された龍涎香は、海に浮かんで海岸にたどり着きます。
商業捕鯨が禁止された現在、偶然体外に排出されたものを拾うほか龍涎香の入手方法はなく、時に数億円と言う非常に高い値がつけられています。
英名「sperm whale」の由来
マッコウクジラは英名「sperm whale」と言うのですが、直訳すると「精液鯨」・・・
え?ちょっとひどくないですか。
マッコウクジラがこんなかわいそうな名前を付けられてしまったのは、前出の鯨蝋が昔は精液と誤解されていたからなのだとか。
誤解は解けても名前はそのまま残りました。
マッコウクジラを見るには
マッコウクジラのいる水族館はあるの?
マッコウクジラを展示している水族館はありません。
マッコウクジラは成長すると10mを超える大きさになり、水槽で飼育することが不可能だからです。
日本国外でも飼育を行っているところはありません。
ホエールウォッチングでマッコウクジラを見る
マッコウクジラを見たい場合はホエールウォッチングがおすすめです。
小笠原諸島近海にはメスと子どもの群れが生息しているとされています。
また、北海道の知床半島近海にはオスの群れが回遊しています。
ホエールウォッチングでは、狙ったクジラが確実に見れるとは限りません。
場所や季節によっても見ることができるクジラは異なります。
ザトウクジラやシャチなど、そのほかのクジラにも会えるかもしれませんよ。
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