ラッコのいる水族館は2か所だけ!今後見ることはできなくなるの?

ラッコのいる水族館

現在日本でラッコに会える水族館は2館だけ。その数なんと3頭。

バブル期にブームを呼んだラッコは全国の水族館で愛嬌を振りまいていました。

あれだけいたはずのラッコがなぜこんなにも減ってしまったのでしょう。

今後日本であの可愛いラッコは見れなくなってしまうのでしょうか?

ラッコの現状と今後について考察しました。

浮かぶラッコの写真

ラッコの生態

ラッコの生息地

ラッコは北アメリカ大陸から千島列島の沿岸にかけて生息しています。

ラッコが暮らしているのは海岸から10㎞ほどまでの岩礁や昆布の森です。

二匹のラッコの写真

ラッコの大きさ

ラッコは食肉目イタチ科ラッコ属に分類される哺乳類で、イタチ科最大種です。

オスの方がやや大きくなる傾向にあります。

体長130㎝、体重オス30㎏、メス20㎏ほどの個体が多いです。

最大ではオスで体長150㎝体重40㎏、メスで体長140㎝体重30㎏ほどに成長します。

ラッコの手足

ラッコの前脚後脚

ラッコの手(前脚)

ラッコの前脚はエサや石、おもちゃなどを持つために使われます。

また、前脚を使って入念な毛づくろいを行っています。

ラッコの足(後脚)

ラッコの後脚には水かきがあり、ひれ状になっています。

泳ぐのに適しており、時速8㎞程度で泳ぐことができます。

歩くラッコ「メイ」

トレーニングによっては後脚を使って立つこともできるようで、鳥羽水族館(三重県)の「メイ」は二足歩行を披露してくれいています。

ラッコの寿命

ラッコの寿命は15~20年ほどと言われています。

野生より飼育下、オスよりメスの方が長い傾向にあります。

国内での最高齢記録は鳥羽水族館の「ポテト」とのとじま水族館の「ラスカ」。ともにメスで、推定年齢25歳まで生きました。

ラスカの死亡により、のとじま水族館でラッコの展示は終了しました。

ラッコの赤ちゃん

ラッコは交尾、出産、育児を海上で行います。

ラッコの赤ちゃんは通常1頭で、母親がお腹の上に乗せて子育てをします。

父親は子育てには参加しません。

ラッコの赤ちゃんには茶色く密度の高い毛が生えていて、その毛が空気を含んで海に浮きます。

3か月程度で大人と同じ毛に生え変わり、海に潜ることもできるようになります。

成長すると、頭から胸の毛が徐々に白っぽくなっていきます。

マリンワールド海の中道(福岡県)のラッコ「マナ」が生まれた時の映像です。

マナはその後立派な成獣に成長しましたが、2021年妊娠中に亡くなっています。

ラッコの謎

ラッコは寒くても平気なの?

ラッコの棲む海はとても冷たく、水温4度から10度ほどしかありません。

ラッコの体には一平方センチあたり10万本の非常に多くの毛が生えており、体全体ではなんと8億本にもあります。

そのため、冷たい海でも生活することができるのです。

ラッコは毛の手入れを怠らず、一日に5~8時間も毛づくろいに費やしています。

ラッコの眠り方は変わってる?

ラッコは昼行性で、夜は海藻(主に昆布)を身体に巻き付けて寝ます。

海流に流されるのを防ぐためでもあり、ラッコの天敵であるシャチに食べられるのを防ぐためでもあります。

シャチは泳ぎにくいので海藻が生い茂る海域を嫌います。

人間ももしシャチに襲われることがあれば、昆布の森に入るといいですね。

ラッコの食べ物は贅沢?

ラッコは肉食で、貝やエビ・カニ・ウニなどを食べます。魚を食べることもあります。とってもグルメです。

そのうえ、皮下脂肪が少ないので、体温を維持するために、大量の食事をとる必要があります。

その量一日あたり自分の体重の2~3割。

30キロのラッコなら6~9キロです。野生と同じ食事を与えようと思えば一日あたり5万円!

水族館ではイカやウチムラサキ貝を与えることが多いのですが、それでもラッコの食費は水族館の生き物の中でも上位クラスです。

ラッコのエサ
1日のラッコのエサ(須磨海浜水族園にて撮影)

鳥羽水族館のラッコはお正月に伊勢エビのご馳走を振舞われています。

ちょっとうらやましいかも。

ラッコの石と不思議なポケットの仕組み

ラッコはお気に入りの石を持っていて、貝を割る際に使います。

そのほかにも潜水する際に重しとして使っています。

この石を収納しているのが、わきの下の皮膚のたるみ。

ラッコはこの部位をポケットのように使っていて、お気に入りの石のほかにも、あとで食べようと思った貝やおもちゃなどを入れています。

結構な容量ですね。

石には並々ならぬこだわりを持っていて、時にラッコ同士で自慢し合い、なくしてしまうと食事もとれないほどに落ち込んでしまうのです。

食事中のラッコの写真

ラッコの可愛い仕草

ラッコの可愛い仕草

手を温めるラッコ

ラッコは手のひらには防寒の毛が生えていません。

冷たい海の中にいると、手が冷えてしまいます。

そこでラッコは水の中から手を出して冷えるのを防ぐのです。

それでも冷たい時は、頬や目の周りの体温が高い所に手をあてて温めます。

この姿がとっても可愛いということで人間たちを虜にしてしまうラッコさんでした。

手を温めるラッコ

手をつなぐラッコ

ラッコは海で流されないように昆布を巻くと言いましたが、水族館には昆布の森がありません。

そこで、ラッコは水流に流されないよう手をつないで寝るのです。

これは野生のラッコではごくまれにしか見られません。昆布があるのでね・・

手つなぎラッコ、とっても可愛いですね。

「ラッコ」はアイヌ語由来

ラッコの名前の由来は?

「ラッコ」はアイヌ語由来の言葉です。

ほかに「アトゥイエサマン」(海のカワウソ)とも呼ばれます。

なぜ同じアイヌ語で二つの名前があるのでしょう。

アイヌの人々はとても信心深く、夜に「アトゥイエサマン」の言葉を使うとカワウソが化けて出ると信じられていたため、「ラッコ」を使うようになったといいます。

肉は食用、毛皮は和人との交易品としても重宝されました。

北方四島に生息するラッコの毛皮は世界一と言われるほど上質です。

十勝の広尾町には「楽古川」という川もあります。

昔はこの楽古川でもラッコが見られたのでしょう。

ラッコ鍋は本当にあった!

ラッコが食用とされていた話は、「ゴールデンカムイ」でも有名となりました。

ラッコを食べたらどうなるか。

それはあえてここでは書きませんが、漫画の中だけのお話ではありません。

ラッコ鍋の逸話は「コタン生物記」や「アイヌ歴史と民俗」といったアイヌ文化を研究した本にも出てくるそうです。

ラッコは絶滅危惧種に指定されているので、現在日本で食用にすることはできません

ラッコのいる水族館

現在、日本でラッコの飼育されている水族館は2館、3頭のみです。

鳥羽水族館(三重県)

場所三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
営業時間9:00~17:00
※特別営業時間あり
休館日年中無休
公式サイト鳥羽水族館 公式サイト (aquarium.co.jp)

メイ(メス)、キラ(メス)の2頭のラッコが飼育・展示されています。

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マリンワールド海の中道(福岡県)

場所福岡県福岡市東区大字西戸崎18-28
営業時間9:30~17:30
※特別営業時間あり
休館日2月第一月曜日とその翌日
公式サイトマリンワールド海の中道 (marine-world.jp)

リロ(オス)という1頭のラッコが飼育・展示されています。

ラッコの今後を考える

水族館のラッコはどうなる?

日本の水族館に初めてラッコがやってきたのは1982年の三津シーパラダイス(静岡県)でした。

翌年には、鳥羽水族館で展示が始まり、そこからラッコブームが到来します。

人気のラッコは全国の動物園や水族館で展示されるようになります。

ピークである1994年には28施設で122頭のラッコが飼育されていたのです。

それがいまや2施設、3頭。

今後国内でラッコを見ることはできなくなってしまうのでしょうか。

絶滅危惧種に指定されたラッコは、現在は輸入禁止となっています。

ラッコの繁殖は可能なのか

繁殖能力の低下

ラッコはもともとは繁殖力が強く、輸入された当初は繁殖事例もたくさんあります。

しかし、水族館生まれのラッコたちは温室育ちで「草食化」してしまい、交尾をしなくなったりと繁殖能力が低下してしまいました。

ラッコの高齢化

国内のラッコは高齢化しており、繁殖が難しい状況です。

2004年生まれのメイ(鳥羽水族館)は人間だと80歳程度であり、出産することはできません。

近親交配を避けている

キラ(鳥羽水族館)はまだ出産が可能な年齢ですが、唯一のオスであるリロ(マリンワールド)とは兄妹であることから、交配は考えられません。

日本における野生のラッコ

日本では20世紀初頭にラッコは一度絶滅した、とされています。

しかし、なんと現在野生のラッコは増えています

1980年代から北海道東部で目撃されるようになり、繁殖も確認されています。

海外ではラッコが増加後、病気などで再度減少した地域もあるので油断はできませんが、期待しても良いのではないでしょうか。

保護ラッコの水族館展示

野生のラッコが増えると、親からはぐれたり、ケガをしたりして保護されるラッコが出てくると考えられます。

アメリカの水族館でもそうしたラッコが水族館で暮らしています。

日本でも新たに保護ラッコが水族館にお目見えする日がくるかもしれませんね。

野生のラッコを見る

水族館で見ることができないなら、野生のラッコを見に行く方法もあります。

北海道東部、根室市の納沙布岬や浜中町の霧多布岬周辺では陸から野生のラッコを見ることができます。

ラッコを見つけることができるかは運次第ですが、水族館とはまた違った一面を見ることができることでしょう。

納沙布岬には、イルカ・シャチなどもやってきますよ!!

納沙布岬イルカのモニュメント