ジュゴンとマナティの違いは何?人魚の正体と言われた生き物は複数いた

ジュゴンとマナティ

ジュゴンとマナティは一見よく似ています。

どちらも人魚の正体と言われている、そんなところまで似ているのです。

ジュゴンもマナティも人魚とは似つかぬ姿をしているように見えるのですが・・・

一体どうしてそうなった?

さらにほかにも人魚の正体と言われる生き物はいるらしい。

ジュゴンとマナティを見分ける方法から人魚伝説の真相まで、まるごと全部ご紹介します!

人魚のシルエット

ジュゴンとマナティ6つの違い

マナティとジュゴンはどちらも海牛目に属する海洋哺乳類で、一見よく似ています。

見分けるポイントはいくつかありますのでひとつひとつ見てゆきましょう。

ジュゴンとマナティの違い

生息地が違う

ジュゴンの生息地

ジュゴンは熱帯から亜熱帯の浅い海域に生息してます。

沖縄がジュゴン分布の北限となっており、日本でも沖縄本島周辺で野生のジュゴンを見ることができます。

マナティの生息地

マナティが棲んでいるのは温暖なアメリカ東海岸やアフリカ西海岸の汽水域(海水と淡水が交わるところ)です。

アマゾン川に住むアマゾンマナティーは淡水域にのみ生息します。

マナティは日本には生息していません。

大きさが違う

ジュゴンの大きさ

体長:2.4~3m

体重:250~450㎏

マナティの大きさ

体長:3~4.5m

体重:300~1000㎏

マナティの方がやや大きいです。

口の付き方が違う

ジュゴンとマナティ顔の違い

ジュゴンの口と食べ物

ジュゴンは浅瀬に生える海草を掘り起こして食べるので、掃除機のように口が下向きになっています。

水族館でもジュゴンは海草しか食べないのでえさ代がめちゃくちゃかかります。

ジュゴンのいる鳥羽水族館ではアマモという海草を与えるのですが、輸入に頼っており、とにかくえさ代が高いのです。

何とかならないものかと試行錯誤の結果、アマモ以外にもロメインレタスを食べることが判明しました。

現在はアマモとロメインレタスをあわせて一日25キロほど与えています。

ジュゴンのえさ代は水族館の生き物の中でも随一で、年間2000万円ほどです。

マナティの口と食べ物

マナティは水草を食べます。

水草は水中に浮かんでいるので、掘り起こす必要がなく、マナティの口は正面を向いています。

水族館のマナティはキャベツなどの野菜を食べています。

ジュゴンより体格の良いマナティですが、えさ代は比較的リーズナブルです。

尾びれの形状が違う

尾びれの形状の違いが最も見分けやすいポイントです。

ジュゴンとマナティ尾びれのちがい

ジュゴンの尾びれ

ジュゴンの尾びれはイルカなどと同じように三角形になっています。

海に棲むジュゴンは速く泳ぐことができるよう尾びれがこのような形状になったと考えられます。

マナティの尾びれ

マナティの尾びれはうちわのような丸みを帯びた形をしてます。

汽水域に棲むマナティは狭い場所にも入り込めるよう小回りがきくようになっているのです。

泳ぐスピードは非常に遅いです。

皮膚の質感が違う

ジュゴンの皮膚

ジュゴンの皮膚は滑らかで、短い毛がまばらに生えています。

マナティの皮膚

マナティの皮膚は厚くて硬く、ごつごつしています。

ジュゴンと同じようにまばらに体毛が生えています。

水中の浅いところにのんびりと生息しているので、苔がついたりフジツボがついたりすることもあります。

アマゾン川に棲むアマゾンマナティの皮膚は他のマナティと異なりツルツルしています。

苔むしたマナティ
苔むしたマナティ

胸びれ(前脚)の形状が違う

ジュゴンの胸びれ

ジュゴンの胸びれには肘がなく、曲げることができません。

また、爪もありません。

マナティの胸びれ

マナティの胸びれには肘があり、曲げることができます。

そのため、えさを持つようにして口に運ぶことができます。

また、ひれの先には蹄のような爪があります。

ジュゴンやマナティは象に近い動物で、かつて陸上に棲んでいたころの名残と言えるでしょう。

マナティの食事風景
マナティの食事

人魚とは

人魚は人間と魚類の特徴を持つ伝説上の生き物で、古くから世界各地で伝承されてきました。

実は地域や時代によって人魚の形状は違っています。

一般に人魚と聞いてイメージするのは上半身が人間、下半身が魚の美しくて若い女性の姿ではないでしょうか。

これはマーメイドと呼ばれる人魚です。

マーメイドは西洋の人魚で、今日の外観イメージは16~17世紀のイングランド民話がもとになっていると考えられています。

それ以前の人魚は人間と同じ外観をしていたり、二本の尾を持っていたり、半人半鳥の形態をしていたりと様々でした。

人魚は女性だけではありません。

男性の人魚もいます。マーマンと呼ばれます。

マーマンはドラゴンクエストのモンスターとしても有名になりました。

人魚の像

人魚=ジュゴン説を広めた人がいた

「人魚の正体はジュゴンである。」

これが、一般的によく知られている説かと思います。

この説が広く知られるようになったのは、博物学者の南方熊楠が著書の中で紹介したことによります。

ジュゴンが授乳をする様子が人間のように見えると言うのです。

ジュゴンの母親は体を縦にして立ったような形で、水面から頭を出し、前足で子どもを抱きかかえるようにして授乳します。

そして、何かに驚くと、たちまち水に潜って魚状の尾を顕わします。

このようなジュゴンの様子を見た古代ギリシア人やアラビア人たちが人魚の話を始めたのだろうということです。

南方熊楠は明治から昭和初期に活躍した博物学者、民俗学者、生物学者で、「知の巨人」とも呼ばれるほど博識な人物です。

人魚=ジュゴン説はすんなりと受け入れられ、広まったというわけです。

ジュゴンのセレナ
ジュゴン

コロンブスが会った人魚=マナティ

アメリカ大陸を発見したコロンブス。

かの有名なコロンブスの航海日記に人魚に出会った記録が残されています。

1493年、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島(現ドミニカ共和国)付近を航海していたコロンブス。3匹の人魚が飛び上がる姿を目撃しました。

コロンブスはその姿を見てがっかりしたようです。

人魚は想像していたような美しい生き物ではなく、顔が少し人間に似ているかな、という程度のものであったと記されています。

この「人魚」。コロンブスが人魚を目撃した場所とマナティーの分布が一致するため、マナティであったと考えられています。

水族館のマナティ
マナティ

日本の人魚伝説=リュウグウノツカイ

日本にもあった人魚伝説

日本における人魚は人面魚のようなもので、正体はリュウグウノツカイであると考えられています。

ジュゴンやマナティは日本(沖縄を除く)には生息しておらず、リュウグウノツカイであれば日本周辺に広く生息しています。

人魚には「赤いトサカがある」とされており、見た目の特徴もあっています。

日本の人魚の話として有名なのが八百比丘尼の伝説です。

八百比丘尼は人魚の肉を食べたことで不老長寿の力を得て、若い娘の姿のまま800歳まで生きたとされています。

リュウグウノツカイであれば、網にかかることもあり、食べることも可能であったはずです。

日本書紀に記された人魚

リュウグウノツカイとは別ものの人魚もいました。

その時の様子は「日本書紀」に記されています。

これは日本における人魚の最古の記録であり、推古天皇の時代、西暦619年の話です。

近江国(現滋賀県)の川で人に似ている生き物が見つかり、摂津堀江(現大阪府)でも人でも魚でもないものが漁師の網にかかったと言うのです。

前出の南方熊楠は、これをサンショウウオではないかと記しています。

古代中国の書物「山海経」でも人魚はサンショウウオに似るとされています。

一方で中国には「海人魚」というマーメイドに近い人魚もいました。

江戸時代になると、西洋や中国からの影響を受け、日本でも下半身が魚の人魚のイメージが定着したと考えられます。

あのアマビエ様も人魚だった

2020年、コロナ禍の日本で一躍有名になった妖怪・アマビエ。

アマビエは江戸時代に肥後国(現熊本県)に現れました。

「近く疫病が流行する。その際には、私の姿を描き、人々に見せよ」と言ったとされています。

長髪に鳥のようなくちばし、うろこに覆われた胴、3本の尾びれのような足を持っている姿が当時のかわら版に描かれています。

漫画家・水木しげるは著書の中で、西洋では人魚が予言を告げる伝承が多くあることから、アマビエも人魚に近いものではないかと記しています。

アマビエのかわら版

謎に包まれたリュウグウノツカイ

リュウグウノツカイとは

リュウグウノツカイは大型の深海魚で、世界中の海に広く分布しています。

記録に残っている最大のもので全長11メートルにもなります。

日本でも各地で揚がりますが、揚がってもすぐに死んでしまいます。

そのため、詳しい生態はわかっていません。

リュウグウノツカイの展示

リュウグウノツカイは各地の水族館で標本の展示が行われているほか、過去にはのとじま水族館(石川県)や城崎マリンワールド(兵庫県)で数時間だけ生きたまま展示されたことがあります。

現代の技術を持ってしても深海の環境を再現することは難しく、リュウグウノツカイを飼育することはできません。

生体の展示を見ることができたら、大変貴重だと言えるでしょう。

リュウグウノツカイにまつわる言い伝え

リュウグウノツカイが珍しい深海魚であることや、風貌が独特で、ある意味不気味であることから「リュウグウノツカイが現れると地震がおこる」などと恐れられてきました。

しかし、近年東海大などの研究により、これは無関係な「迷信」であると検証されました。

一方で、豊漁を呼ぶともされているリュウグウノツカイ。ノルウェーではニシンを率いる「ニシンの王」と呼ばれています。

謎の多いリュウグウノツカイ。神秘的な風貌と解明されない生態が人々を魅了するのかもしれません。

リュウグウノツカイの写真

ジュゴンのいる水族館

ジュゴンの展示は世界的にも大変珍しく、現在日本で展示しているのは唯一鳥羽水族館だけです。

鳥羽水族館にはセレナというメスのジュゴンがいます。

セレナは35年前にフィリピン沖合で保護され、フィリピン政府から鳥羽水族館に贈られました。

鳥羽水族館(三重県)

場所三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
営業時間9:00~17:00
※特別営業時間あり
休館日年中無休
公式サイト鳥羽水族館 公式サイト (aquarium.co.jp)

マナティのいる水族館

マナティは世界に3種存在しています。

それぞれのマナティに会える水族館をご紹介します。

アフリカマナティのいる水族館

鳥羽水族館(三重県)

場所三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
営業時間9:00~17:00
※特別営業時間あり
休館日年中無休
公式サイト鳥羽水族館 公式サイト (aquarium.co.jp)

アメリカマナティのいる水族館

新屋島水族館(香川県)

場所香川県高松市屋島東町1785-1
営業時間9:00~17:00
休館日年中無休
公式サイト新屋島水族館 (goope.jp)

美ら海水族館(沖縄県)

場所沖縄県本部町石川424
営業時間通常期 8:30~18:30
繁盛期 8:30~20:00
休館日12月の第1水曜とその翌日
公式サイト沖縄美ら海水族館 (churaumi.okinawa)

アマゾンマナティのいる水族館

熱川バナナワニ園(静岡県)

場所静岡県東伊豆町奈良本1253ー10
営業時間9:00~17:00
休館日年中無休
公式サイト熱川バナナワニ園 (bananawani.jp)

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