【水族館の歴史】日本初から劇場型アクアリウムができるまで

水族館の歴史

この記事を開いてくれたみなさんは水族館好きってことでOKですよね。

日本は人口当たりの水族館数が世界一って知ってました?

そんな水族館大国ニッポンに初めて水族館ができたのはいつ?それは一体どんなものだったのか。

そして進化した水族館の新しいかたちまで。水族館の歴史をどーんとまとめました。

水族館のあゆみを知ればまた訪れてみたくなること間違いなしです!

くらげ水槽

日本初の水族館

うをのぞき

1882年、東京に日本初の動物園である「上野動物園」が開園しました。

その上野動物園の一角に「観魚室(うをのぞき)」が開設されます。

うをのぞきは循環ろ過装置のない小規模な水槽で、淡水魚のみが飼育されていました。

これが日本初の水族館とされる場合もありますが、まだまだ本格的な展示にはほど遠いものでした。

上野動物園ゲート
現在の上野動物園

和楽園水族館(和田岬水族館)

1895年「第4回内国勧業博覧会」が京都市で開かれた際、神戸市もこれに協力して当時和田岬にあった「和楽園」という遊園地内に、「和田岬水族放養場」を開設しました。

海に近い和田岬水族放養場では、海水魚の展示が行われ、博覧会終了後も残されました。

2年後の1897年には「第2回大日本水産博覧会」が神戸市で開催されます。

この博覧会のおり、神戸市は和田岬水族放養場を充実させ、「和田岬水族館」として公開しました。

館内には大小30個の水槽が置かれ、瀬戸内海で捕れる魚介類を中心に約100種5000点が展示されました。

当時すでに海底や岩場を模したジオラマ風の展示が行われ、本格的な循環ろ過装置も設置されていたといいます。

この和楽園の和田岬水族館(通称「和楽園水族館」)が日本初の本格的な水族館とされています。

「水族館」という名称も初めて使われました。

和楽園水族館模型
須磨海浜水族園にある和楽園水族館の模型

博覧会終了後には、水族館の施設は神戸駅にほど近い湊川神社の敷地内に移され、1902年から1910年の間「楠公さん(※)の水族館」として市民に親しまれました。

※楠公さんとは楠木正成のこと。湊川神社に祀られており、神戸市民は湊川神社のことを親しみをこめて楠公さんと呼ぶ。

神戸で日本初の水族館が誕生したのは必然的な出来事でした。

水槽のポンプや配管などには、当時最新鋭だった神戸造船業の技術が生かされたのです。

JR和田岬駅
現在の和田岬駅

高度経済成長期の水族館

高度経済成長期には、鉄道会社が沿線の都市開発のために動物園や水族館を次々と開業していきました。

今も残る施設もありますが、施設の老朽化もあり、近年閉館が相次いでいます。

南海電気鉄道が開業したみさき公園(2020年閉園)や京浜急行電鉄出資の京急油壺マリンパーク(2021年閉館)もそのひとつです。

水族館では、海水を扱うため施設の劣化が早く、約30年に一度大規模な改修が必要とされています。

今後次に掲載する水族館ブーム期に建設された水族館の改修時期も控え、水族館経営は大きな岐路に立たされています。

在りし日のみさき公園
在りし日のみさき公園

水族館ブームの到来

1990年代、葛西臨海水族園(東京都)やマリンワールド海の中道(福岡市)を皮切りに、各地に大型の水族館が建設され、集客数もピークに達しました。

水族館はその人気にともなって、立地エリアも人口の多い都市部へと変化してゆきます。

大型水族館の建設

水槽にアクリルパネルが使用されるようになり、以前のガラス水槽では不可能だった巨大水槽を作ることができるようになりました。

技術の進化により、海遊館(大阪府)や名古屋港水族館(愛知県)などアクリルパネル製巨大水槽を有する大型水族館が続々と誕生しました。

2002年にリニューアルオープンした沖縄美ら海水族館では当時ギネスブックにも掲載された巨大アクリルパネルが使われています。

巨大水槽で大迫力のジンベエザメなどを鑑賞できるとあって連日メディアに取り上げられ、観光客が競うように訪れました。

美ら海水族館は現在も沖縄県最大の観光名所で、年間300万人の人が訪れています。

美ら海水族館の大水槽
美ら海水族館

都市型水族館へ

水族館は観光地に作られることが多かったのですが、都市部に作られるようになったことで、さらに身近なものへとなりました。

内陸部を含む都市部で水族館が作られるようになったのは、人工海水技術や循環ろ過装置の高性能化により、バックヤードの省スペース化に成功したことが大きく影響しています。

人工海水は安定的な供給ができることに加えて、病原菌や海洋汚染のリスクもなく、安全に利用することができます。

すみだ水族館(東京都)や京都水族館(京都府)では100%この人工海水を利用しています。

こうして多くの人が仕事帰りや何気ない休日に気軽に水族館に立ち寄ることができるようになったのです。

東京スカイツリーとすみだ水族館
すみだ水族館

水族館の新しいかたち

次世代型水族館の誕生

水族館は子どもたちの学びや行楽のためのものだけでなく、デートで訪れたり、癒しを求めて行くものとして認知されるようになりました。

大人たちへの需要が高まると、水族館は新たなエンターテイメントを提供するようになります。

四国水族館(香川県)やスマートアクアリウム静岡(静岡県)など大人を主なターゲットにしたスタイリッシュな水族館が続々とオープンしています。

2021年に神戸の中心部にオープンしたアトアは、舞台美術やデジタルアートを駆使した幻想的な空間に水槽を並べ、水族館とアートを融合させた劇場型アクアリウムです。

現代美術館のような佇まいで神戸の街の新しいシンボルとなっています。

アトア外観
劇場型アクアリウムアトア

体験型のプログラムの充実

近年、従来型の水族館でもさまざまな体験プログラムが実施されるようになりました。

水族館は見るだけではない付加価値を提供してくれる施設として進化を続けています。

体験できるプログラムは施設によって異なりますが、閉館後の水族館に泊まることができるもの、イルカやアシカの調教を体験できるもの、一緒に泳いだり触ったりできるものなど大人も子どもも探求心をくすぐられるような内容になっています。

体験プログラムは入館料のほかに別途料金が必要な場合が多いですが、特別な体験ができるとあって、予約がすぐに埋まってしまうほど人気となっています。

イルカプログラム実施風景
イルカとのふれあい

日本に初めてできてからおよそ140年。以来さまざまに進化を続けてきた水族館。

水族館は日本で愛され続けてきました。

工業技術の発展と現場スタッフの発想や努力がそれを支えています。

ぜひ何度でも水族館におでかけしてみてください。新しい発見がきっとそこにあります。