旭山動物園のアザラシから始まった?行動展示って一体何?

旭山動物園あざらし館

北海道で人気の観光地、旭山動物園。

特段どうぶつ好きでなくてもその名を知らない人はいないでしょう。

年間来場者数日本一にも輝いたことがある旭山動物園ですが、開園当時から有名な動物園だったわけではないのです。

パンダのような特別な動物がいるわけでもない旭山動物園がここまで有名になったのは「行動展示」の手法を取り入れたからにほかなりません。

旭山動物園を成功に導いた行動展示と、そのきっかけとなったアザラシについてご紹介します。

旭山動物園の入口
写真ACより

旭山動物園で行動展示ができるまで

従来型の展示方法

行動展示というのは動物園などでの飼育動物の展示方法の一つです。

ほかにどのような展示方法があるのかご紹介します。

形態展示

形態展示は古くからある動物の展示方法で、動物のすがたかたちだけを見せる方法です。

多くは檻に入れた動物が単独飼育されます。

動物園のハイエナ
動物園のハイエナ

生態展示

動物が本来生息する環境を再現し、動物とその生活環境をあわせて観察することができる比較的新しい展示方法です。

「サバンナに棲む動物」「干潟に棲む生物」などといった形で飼育され、世界の動物園の主流となっています。

安佐動物公園のようす
安佐動物公園(広島県)

きっかけとなったアザラシへの一言

旭山動物園を改革し、有名となった坂東園長さんが1986年にはじめてこの動物園に赴任した時のお話です。

当時の旭山動物園は開園から20年たち、園舎も古くなり閑古鳥が鳴いている状態でした。

ある日幼稚園の園児たちが遠足で訪れていました。

折しも、日本の水族館や動物園はラッコブームに沸いていました。

プールにいるアザラシをラッコだと思ったのか、なかなか動こうとしない園児に対し、引率の先生が衝撃の一言を言い放ちます。

「それはただのアザラシだよ。」

園長さんはこの発言を聞いて「いつかアザラシで見返してやる」と思ったそうです。

ただのアザラシって・・ひどい、と思いましたが、当時の状況を考えると仕方ないのかもしれません。

アザラシは北海道では野生でも見られるうえ、多摩川のタマちゃんやアニメのゴマちゃんブーム以前の話でアザラシはまったく人気がない動物でした。

ともあれアザラシの本来の魅力を伝えたい、という園長さんの熱い思いによってあざらし館の行動展示が生まれたのです。

旭山動物園のゴマフアザラシ
旭山動物園のゴマフアザラシ(写真ACより)

行動展示とは

動物本来の動きを引き出す展示方法のことです。

動物たちが走ったり、飛んだり、泳いだり、エサを捕ったりする時に行う行動を自然な形で誘発し、観察できるようにしたものです。

【旭山動物園行動展示の例】

旭山動物園のオランウータン
旭山動物園オランウータンの「空中散歩」(写真ACより)
旭山動物園のヤギ
旭山動物園細い足場を渡るヤギ(写真ACより)
旭山動物園のペンギン
旭山動物園水中の中のようすが見えるぺんぎん館(写真ACより)

広がる行動展示

旭山動物園での成功をもとに、現在ではさまざまな動物園や水族館で行動展示の手法を見ることができるようになりました。

従来の生態展示に行動展示を組み合わせた展示も行われています。

飼育される動物、観察する人間双方にとってより良い環境であることが望まれます。

あざらし館の見どころ

あざらし館の歴史

2004年あざらし館の開館は旭山動物園にとって大きな転機となりました。

1997年以降、旭山動物園は行動展示を取り入れた動物園改革を進めていました。

その改革は次第に有名になり、来園者数も伸びてきていました。

そのような中でのあざらし館の公開は大きなニュースとなり、多くの来園者が訪れたのです。

その後、旭山動物園改革の物語はドキュメンタリー番組やドラマでも取り上げられ、来園者数は一時年間300万人をも超えました。

今でもあざらし館は旭山動物園を代表する施設となっています。

漁港をイメージした屋外展示場

屋外展示場は岩場やテトラポットを模して造られています。

アザラシがのんびりくつろいでいます。

あざらし館のアザラシ
写真ACより

下の動画は本当に漁港に集まっているアザラシ。

この北海道ではおなじみの光景を動物園で見ることができるというわけですね。

流氷広場

冬場はアザラシたちの暮らす流氷の世界を再現するため、あざらし館のプールに氷が張られます。

冬になると北海道にも流氷が流れ着きます。

ゴマフアザラシたちも流氷とともに北海道にやってきます。

あざらし館の流氷広場では、そのような冬の北海道の自然を体感できるのです。

流氷広場のアザラシ
写真ACより

もぐもぐタイム

旭山動物園では動物たちのえさやりの時間を「もぐもぐタイム」と呼んでいます。

飼育員さんがえさを持って登場すると、ごろごろ転がっていたアザラシたちが活気づきます。

もぐもぐタイムの時間は日によって異なりますので、公式サイトや園内の掲示板でご確認ください。

360度観察できる屋内展示場

マリンウェイ(円柱水槽)

あざらし館で特に見ておきたいのがマリンウェイです。

円柱型の水槽の中を上下に泳ぐアザラシの姿を確認できます。

野生下でのゴマフアザラシは、氷に覆われた海に棲んでいます。

アザラシは哺乳類なので、水面に出て呼吸をしなければなりません。

その時、氷の割れ目から顔をだすのです。

狭い隙間を泳ぐので縦になって泳ぎます。

この動きを見ることができるのがマリンウェイなのです。

マリンウェイのアザラシ
写真ACより

洞窟窓

アザラシ水槽の脇には水槽内をのぞき込むことができる洞窟窓が設置されています。

水中でアザラシを観察しているかのような体験ができます。

あざらし館の洞窟窓
写真ACより

あざらし館に住むいきもの

あざらし館にはアザラシの棲む野生環境を再現するため、2種類の鳥も同時に飼育されています。

展示されている鳥はケガをしているところを保護された個体で、飛ぶことはできません。

ゴマフアザラシ

オホーツク海やベーリング海に生息するアザラシで、冬場は流氷に乗って北海道沿岸に現れます。

体にある胡麻のような模様が特徴的で、日本で最もよく知られているアザラシです。

オジロワシ

越冬のために北海道にやってくる大型の渡り鳥で、野生下ではアザラシの死肉を食べることもあります。

オジロワシ
野生のオジロワシ

オオセグロカモメ

北海道で繁殖するカモメで、漁港に多く見られます。

背が黒灰色なのが特徴です。

オオセグロカモメ
野生のオオセグロカモメ

旭山動物園基本情報

場所旭川市東旭川町倉沼
営業時間日によって異なる
休館日4月の大半(2023年は4月8日~4月28日)、11月4日~11月10日、12月30日~1月1日
公式サイト 旭川市 旭山動物園 (city.asahikawa.hokkaido.jp)

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