ナマズが地震の原因ってどういうこと?一体いつからそうなった?

ナマズと地震の歴史

「ナマズ」と言ってすぐに連想するのは「地震」ですよね。

一体どうして、いつからそのようなイメージがついたのでしょうか。

第一本当にナマズと地震に関係はあるのでしょうか。

ナマズと地震の関係を日本の歴史から読み解きます。

ナマズのアップ

地震の象徴とされたナマズ

鹿島神宮大鯰の碑
鹿島神宮大鯰の碑

日本書紀に記された地震

日本で最初の地震の記録は、日本書紀にある416年の大和地震です。

推古天皇の時代には、地震が起きて地震神を奉ったと記載されており、古代日本では地震は神の力によるものと考えられていたことがわかります。

中世の地震観

中世になると、それまで日本にあった地震神信仰と中国の陰陽道による世界観が結びつき、日本独自の地震観が生まれました。

日本列島の地下には、龍のようなものが眠っており、それが暴れることにより地震が起こるとするものでした。

その後、次第に龍はナマズへと変わっていったのです。

豊臣秀吉とナマズ

豊臣秀吉は伏見城築城の際、京都所司代に宛てて「なまつ大事にて候まま」(地震が対策は大切だよ)と手紙を記しています。

これが、ナマズ=地震を起こすものと明記された最初の文献と考えることができます。

江戸の人々とナマズ

鯰絵

1855年に起きた安政地震は東京湾北部を震源とする推定マグニチュード7の大地震でした。

吉原で大火が発生するなど被害は甚大なものであったといいます。

この地震ののち、江戸を中心に鯰絵が大量に出回りました。

鯰絵はナマズを題材にした浮世絵です。

鯰絵は幕府への届け出のない不法出版物でしたが、地震の被害を避けるお守りなどとして人気を博し、確認できるだけでも250もの種類が発刊されました。

江戸の鯰絵
鯰絵(大鯰を懲らしめる民衆)

要石信仰

要石とは地震を起こす大鯰を抑えているとされる石です。

茨城県の鹿島神宮のものが有名です。

古来より要石は地下の龍蛇を押えて、地震が起きるのを防ぐとされました。

鯰絵でも鹿島の主神であるタケミカヅチ、要石(石の剣)、大ナマズは非常に重要な要素となっています。

大鯰をしとめるタケミカヅチ
大鯰をしとめるタケミカヅチ

兜のデザインとなったナマズ

なぜナマズの兜を作ったのか

戦国時代、多くの武将たちが変わった形の兜を着用していました。

戦場で目立つためでもあり、縁起を担いだり、信条を表すものでもありました。

当時すでにナマズは地震を起こす大きな力を持つと思われていました。

大地を揺るがす強大な力にあやかって、ナマズの尾びれをかたどった兜をつくったのです。

前田利家の兜

加賀百万国の祖である前田利家が被っていたとされるのが「鯰尾の兜」です。

利家は身長6尺(約182㎝)もあり、体格的にも恵まれ、非常に武勇に長けた武将でした。

金沢市にある利家と妻まつを祀った尾山神社には「大鯰尾兜」と「小鯰尾兜」という尾の長さの異なる二つの兜が残っています。

これら二つの兜は黒漆塗りですが、尾山神社の境内には金の鯰尾兜の像が飾られています。

実際に前田利家は、金箔を貼った烏帽子形の兜を被っていたといい、現存しています。

なお、利家の息子利長の「銀の鯰尾の兜」も現存しています。なんと全長127㎝もあります。

尾山神社にある金の鯰尾の兜像
尾山神社にある金の鯰尾の兜像

蒲生氏郷の兜

蒲生氏郷は織田信長の寵愛を受けた武将で、信長は氏郷に初めて会った時「目つきがただものではない」と言ったと言います。

文武に優れた名将で、信長・秀吉に重用されましたが、40歳の若さでなくなりました。

氏郷は「銀の鯰尾の兜」を被っていた、とされています。

残念ながらこれは現存していません。

いまでも見ることができる氏郷の兜は「燕尾形兜」で岩手県立博物館が所有しています。

氏郷は新たに家臣をむかえる時、「銀の鯰尾の冑を戴き先陣に進む者有り、此者に劣らず働くべし」(銀の鯰尾の兜を被った人がすごいから、君も同じように働いてね)と言いました。

この「銀の鯰尾の兜を被った人」こそ実は氏郷で、氏郷はいつでも陣頭指揮をとって出陣していました。

当時、戦場でこのような行動をとる大将はほかにおらず、勇猛果敢な武将として名をはせたのです。

陣頭指揮をとることについては、豊臣秀吉に諭されたりもしていますが、このエピソードから蒲生氏郷と言えば銀の鯰尾の兜だったことがわかります。

ナマズは地震を起こすのか

川底に潜むナマズ

ナマズは地震の原因ではない

当然ですが、ナマズのせいで地震が起きるなどと言うことはありません。

日本人の信仰心が作り出した迷信だと言えます。

ナマズは地震を予知できるのか

「ナマズが地震を起こす」という話と同時に信じられてきたのが「ナマズが地震を予知する」という話です。

地震の前には様々な動物が異常行動を起こすことは、世界各地で報告されています。

前出の江戸の安政地震の際、地震の起こる3~4時間前にナマズが暴れたという話も残っています。

ナマズの肌には小さな穴がたくさんあり、ひとつひとつが電気を感じ取るセンサーの役割をしています。

身の回りの生物が発する微弱な電気を感じ取ることでナマズはエサをとったり、危険を回避したりしているのです。

そのため、地震のときに出る電磁波を敏感なナマズが感じ取り、暴れているのではないか、とも考えられます。

とは言え、ナマズと地震の関係はいまだ解明されておらず、詳しいことはわかっていません。

今後研究が進めばナマズによる地震予知ができる日がくるかもしれませんね。

ナマズは地震を起こすどころか地震による被害を軽減してくれる生き物だった、という未来に期待しましょう。

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