ペンギンは美味しくない?日本初の南極探検隊は味噌煮で食べていた

ペンギンを食べる

愛らしい姿で人気のペンギン、見ているだけで癒されますよね。

しかし、見ていると、ふとした疑問が湧いてしまいます。

「ペンギンって鳥だし、食べれるんじゃない?」

実は現在はペンギンを食べることは禁止されています。

しかし、過去にはペンギンを食用としていた歴史もあります。

あんまり美味しそうには見えないのですが、ペンギンってどんな味なのでしょうか。

禁止になった経緯と合わせてご紹介します。

南極のペンギン

南極探検隊ペンギンと遭遇する

日本人が初めて出会ったペンギン

日本人が初めて南極大陸に到達したのは1912年のことでした。

白瀬矗(しらせのぶ)率いる南極探検隊が南極の地に降り立ったのです。

その前年の1911年、南極に向かう途中で日本人は初めてペンギンに遭遇しました。

ペンギンを初めて目にした隊員の感想は「魚に似て魚にあらず」「奇々怪々の動物よ」といったものでした。

白瀬南極探検隊
白瀬南極探検隊

南極探検隊ペンギンを捕獲する

白瀬南極探検隊がペンギンに遭遇した際、ペンギンは逃げることもなく船に接近してきました。

そこで隊員たちは長い竿に袋をつけてタモ状にしたもので捕獲しました。

捕獲されたペンギンは、おとなしく隊員に抱かれるなど恐れる様子もなかったようです。

その後、このペンギンが死亡したため、隊員たちはこれを剥製にして持ち帰りました。

この時の剥製は明治天皇に献上されました。

このペンギンは当初アデリーペンギンと考えられていましたが、のちの調査でシュレーターペンギンであると判明しました。

つまり、日本人が初めて出会ったペンギンはシュレーターペンギンでした。

白瀬南極探検隊は他にもコウテイペンギンの剥製やペンギンの胃の中にあった石など貴重な資料を持ち帰っています。

南極探検隊ペンギンを食べる

白瀬南極探検隊がアデリーペンギンを食した際の記録が「南極記」に残っています。

「南極記」は白瀬南極探検隊の後援会がまとめた資料集です。

それによると、ペンギンのお味の感想は「味噌煮の為めか一寸賞味に値した」とのこと。

味噌煮にすれば、食べれるよってところでしょうか。

また、多田恵一隊員の手記にもペンギンの味についての記述があります。

ペンギンは、クジラやアザラシの肉と似た味であるが、油が多いので3度ばかり淡水か海水で煮てから照り焼きにすると焼き鳥のようで美味しい、とのことです。

ペンギン肉は油臭い、というのは他国の南極探検隊のあいだでも言われていて、食べるにはあらかじめ油抜きをするのが良いようですね。

アデリーペンギン
アデリーペンギン

ペンギンは美味しくないの?

ペンギンの肉は臭い

南極探検隊の記録からもわかるように、ペンギンの肉は美味しいとは言えないようです。

生臭いとも油臭いとも言われています。

一般的に肉食の動物は臭みが強く、美味しくないとされています。

普段わたしたちの食べている家畜は穀物を与えて育てられています。

つまり、現代人は草食の動物を食べ慣れているため、肉食の動物は口にあわないのだということです。

ジビエとして食べられる熊やイノシシ、鴨なども完全な草食ではありませんが、雑食性です。

しかし、ペンギンは完全なる肉食です。

ペンギンのエサとなるのは魚やイカ、甲殻類などです。

ペンギンに限らず、魚ばかり食べている海鳥の肉は生臭く、後味最悪で、好んで食べる人は世界でもほとんどいません。

かつては各国の南極探検隊や観測隊が、現地で確保できるタンパク源としてペンギンを食べていましたが、特段好んで食べていたわけではないようです。

ペンギンは卵のほうが美味しい?

ペンギンは肉より卵の方が美味しい、とも聞かれます。

南米にあるイギリス領フォークランド諸島やアフリカの一部地域ではペンギンの卵を食べる文化があるようです。

しかし、実際のところペンギンは卵も生臭く、日本人には食べ慣れない味だとか。

ゆで卵にしたものを酢につけると臭みが軽減するようですが、ニワトリの卵のようにはいかないそうです。

一方でペンギンの卵は日持ちがするため、航海中の保存食として役立ったといいます。

ペンギンを食べてもいいの?

アデリーペンギン正面

乱獲されていたペンギン

19世紀終わりから20世紀初頭にかけてペンギンは乱獲されていた時代がありました。

それは食用としてではなく、ペンギンからとれる油を目的としたものでした。

ペンギンの油は「ペンギンオイル」と呼ばれ、灯油や石鹼の材料などに使用されていました。

ペンギンには尾脂腺という油を出す器官があるほか、脂肪も多く精製して油を取り出すことができます。

ペンギンは人間に対する警戒心が薄く、手で捕まえることさえ可能だと言います。

このような捕獲の容易さもあり、なんと最盛期の16年間で500万羽のペンギンが油と化してしまいました。

精製方法はと言うと、撲殺した大量のペンギンを圧力なべのような「ペンギンを蒸す機械」に入れ、蒸気と熱で分解していました。

この機械は今もオーストラリアのマッコーリー島に残されています。

もちろん、現在は稼働していません。

ペンギンを食べることは禁止されている

1919年には、マッコーリー島でのペンギンの捕獲が禁止となり、ペンギンオイル産業は衰えていきました。

このような乱獲や、石油の流出事故、地球環境の破壊によって、ペンギンの数は減っています。

現在ではペンギンは保護の対象であり、食用とすることはできません。

ペンギンの卵についても食用とすることは原則禁止されています。

ペンギンの仲間のうち、絶滅危惧種に認定されているものは半数を超えます。

環境破壊を防ぎ、ペンギンたちの生活を守ってゆきたいですね。

どうしてもペンギン肉の味が知りたい方は、食用を禁止されていない海鳥をお試しください。(※よく火を通してください。)

近い味わいが楽しめるかと思います。

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